一組の家族が来ていました。
お父さんの腕の中に抱かれていました。
元気な赤ちゃんなのですが、左腕がマヒしていて
動かないのが分かります。
泉の湧き出る洞窟の中を通り、熱心に祈って出て来た時、
若い両親の顔には大粒の涙がポロポロ流れ落ちていました。
お互いが その涙でクシャクシャの顔を見つめながら
胸が一杯の様子で、そのまなざしは喜びと感謝に
溢れていました。
赤ちゃんは、お父さんの腕の中で両足と右腕を元気に動かしています。
ですが相変わらず左腕は動きません。若い両親は彼らの赤ちゃんの左腕が
治るという『奇跡』を求めてここルルドにやって来たのかもしれません。
慰めと希望を求めて来たのかもしれません。
身体的な奇跡は得られませんでしたが、心は満たされたようでした。
若い両親と4人の子ども達は、偶然その後の大聖堂でのミサで私達と一緒になりました。
彼らは斜め後ろに仲良く家族一緒に座って居ましたが、
赤ちゃんは聖体拝領の頃にミサに飽きてしまったようで、
『もう、いい加減にしてよう』と訴えんばかりに泣き出してしまい、
若い両親は赤ちゃんを慈愛に満ちた眼差しで見つめながら優しくなだめていました。
ルルドでは、病気の人・身体の不自由な人・弱く小さい人達が全てにおいて優先されます。
その赤ちゃんも例外ではありません。いつもなら うるさく感じるであろう泣き声も、
不思議と気にはなりませんでした。
ミサの後、何人もの巡礼者達がその両親や赤ちゃんに優しく話し掛け、
明るく応える彼らも嬉そうにしていました。
ルルドは優しさに溢れる場所でした。
つづく
by Y.Y.
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